ファサードを「一枚の大きな面」と捉える時代は終わりつつあります。街に溶け込みながらも存在感を放つ建物は、しばしば壁面を“分節”し、リズムや奥行きをつくることでスケール感・環境性能・経済性までをコントロールしています。今回はデザイン面だけでなく、周辺環境、コスト、メンテナンスまでを横断的に見ながら「分節した壁面」の実践ポイントを探ります。
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そもそも“分節”とは?
- 形態的分節:大きなボリュームを細かく区切り、立体感や影を生む
- 材料的分節:素材を切り替え、色・テクスチャでストーリーを組み立てる
- 機能的分節:可動ルーバーや開口部を組込み、環境制御を担わせる
この3層を意識すると、単なる意匠テクニックを超えた設計が可能になります。
デザイン性 ─「巨大感」をほどく5つの手法
- 垂直フィンのリズム:細い柱状エレメントで視覚を分散し、建物をスリムに見せる。
- 水平バンド:庇やスラブを外部に現し、上下階のスケール感を強調。
- 折り紙的折れ面:紙を折るような陰影で、光の当たり方を一日中変化させる。
- ピクセル化:小さなユニットをずらし積むことで、人間的スケールと遊び心を同居。
- パーフォレーション:孔あきパネルで内部からの光を滲ませ、夜景でも二層的表情を作る。
周辺環境へのフィット
- 街区スケール:歴史的街並みでは分節を細かくし、隣接建物の軒高さをトレース
- マイクロクライメイト:分節面が生む「影ポケット」は夏の放射熱を低減し、路面温度も下げる
- 視線の抜け:細かい分節+透過素材で通風経路や眺望を確保し、閉塞感を防止
経済性 ─「映える壁」をどうコストコントロールするか
- モジュール化:分節を均等ピッチに揃え、パネルをプレキャスト化することで現場工期短縮
- 標準材の転用:見切り材・アルミ角材など安価資材を“デザインコード”として連続配置
- フェーズ施工:一期は基本外皮、二期で付加的分節を足す計画にすると、資金繰りに柔軟さが生まれる
メンテナンス性 ─「分節=手間増」ではない
- アクセスライン:庇などの分節ラインを足場兼用に設計すると年次清掃が容易
- 交換容易性:ユニット化により破損時はパネル単位で差し替え可
- 仕上げ選定:光触媒塗装や撥水性タイルを採用し、埃の堆積を低減
まとめ
- 分節は「意匠」「環境」「経済」「維持」の4軸で検討
- 意匠ディテールはモジュール化可能か検討
- 日射シミュレーションで影ポケットの効果を可視化
- 清掃アクセスをデザイン要素に統合
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one archi
現在の主な作業
一級建築士試験に一発合格し、組織設計事務所にて主に学校、公民館、道の駅、発電所等の幅広い用途の公共建築物の設計を行なっている。
自己紹介
芸術学部建築学科を卒業後、ハウスメーカーメーカーにて住宅の設計販売に携わる。一級建築士事務所開設を夢に、ハウスメーカーを退職し資格学校へ通うが、そこで現職場の先輩にスカウトされ組織設計事務所に所属する事になる。一級建築士の他に、インテリアプランナー、建築積算士、casbee評価員の有資格者である。2020年、実務経験と建築知識を活かして建築系のWEBライターとして始動。
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