日本を代表する建築家の吉村順三のコトバに「明かりの重心は低い位置の方がよい。床が明るくなって、部屋がずっと落ち着いてくる。」「天井高は内寸5尺7寸(2250mm)という寸法が決定的ともいえるほど、高さの寸法であると思っている」とあります。落ち着いた空間をつくる時には、重心を低くする方が望ましいことを説いた言葉ですが、昨今の住宅は逆に天井高さを高く、吹抜けを造り、開放感を高めようとする方向で、吉村順三の目指す方向と逆の路線のように感じます。
たしかに、天井高さが高く、吹抜けがあれば解放感があり、気持ちのいい空間と感じる場合もありますが、少し落ち着かない感じもします。ヒトの心に響かせる「落ち着く」感じは、重心を低くすることで安心感や安堵感に繋がるのではないかと考えます。
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空間の重心を低く抑える3つのコツ
空間の重心を低く抑え、ヒトのこころに落ち着きを与えるコツは「光を低い位置に配置する」「空間のプロポーションを低く抑える」「天井周辺に余計なデザインを入れない」の3つがポイントになりえると考えます。
光を低い位置に配置する
太陽の光を低い位置に滑り込ませるように、庇の出寸法、窓の上枠ラインを調整することで、天井がうす暗くなり空間全体の重心が低く感じます。また、吉村順三のコトバでもあるように、照明の光を部屋全体を煌々と照らすのではなく、床面をポイント的に明るくすることで空間の重心がぐっと低く抑えることができます。
空間のプロポーションを低く抑える
空間の縦横比の関係性ですが、昨今の住宅では天井高さを高く、吹抜けを付けるなど、どうしても縦の比が大きくなろうとしています。例えばリビング空間であれば、一般的な2尺(約3,630mm)の幅に対して、吉村順三は内寸5尺7寸(2,250mm)が程よいと言われています。縦横比で計算すると、縦:横=1:1.613となります。この比は限りなく黄金比に近い比率となります。
一方、最近の住宅は天井高さを2.6〜3.0m程度まで高く計画され、さらに吹抜けまで計画すると、最も高い所では、6m程度の天井高さになります。リビングの幅寸法は上記と同様として、最も高い所の吹抜け部で縦横比を計算すると、縦:横=1:0.6となり、縦の比率が大きくなります。縦の比率が大きく感じる空間は上部への開放感は得ることが出来ますが、少し落ち着かない空間となります。出来る限り天井高さを抑えることが最も容易に経済的に落ち着く空間をつくり上げるコツの1つだと感じます。
天井周辺に余計なデザインを入れない
天井周辺には、廻り縁、照明器具、換気扇、自火報、時計、背の高い書棚など様々なモノが取り付く場合が多くあります。これら天井周辺に取り付く様々なモノを出来る限りシンプルに納め、その空間に座るヒトの視線から排除する工夫をすることで、天井はスッキリ一枚の面として認識し、床面にある椅子やテーブル、カウンターなどに目線が集中することで、重心を低く感じられることがあります。また、天井面は壁面で視線が止まるのではなく、壁の向こうまでいってるような錯覚を覚えるようなディテールにするなど、小さな建築的な工夫により、先ほどの縦横比の横比率が高く感じ、重心を低く感じさせることも可能です。
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one archi
現在の主な作業
一級建築士試験に一発合格し、組織設計事務所にて主に学校、公民館、道の駅、発電所等の幅広い用途の公共建築物の設計を行なっている。
自己紹介
芸術学部建築学科を卒業後、ハウスメーカーメーカーにて住宅の設計販売に携わる。一級建築士事務所開設を夢に、ハウスメーカーを退職し資格学校へ通うが、そこで現職場の先輩にスカウトされ組織設計事務所に所属する事になる。一級建築士の他に、インテリアプランナー、建築積算士、casbee評価員の有資格者である。2020年、実務経験と建築知識を活かして建築系のWEBライターとして始動。
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