建物のアプローチや駐車場、街の道路にはコンクリートやアスファルト、インターロッキングやタイル、石畳等、様々な舗装が施されています。舗装は、元来雨天でも通行の支障にならないよう床面を補強する目的で作られたものですが、現在では、車両走行時の低騒音型舗装や、安全性を考慮した滑り抵抗値の基準を満たしたタイル舗装、視覚障害者でも容易に判断できるユニバーサルデザインに配慮した舗装、都市部のヒートアイランド現象を抑制する保水性舗装など、より高性能な舗装が施されるようになりました。
そんな高機能な舗装が出てきた現在においても、昔からある石畳の風景は趣のある風情が感じられます。やはり、機能性だけで舗装のデザインを決定するのは面白みに欠けますので、建物や周辺環境に調和する美しい舗装が望まれます。そんな美しく感じられる舗装について、雨水の導き方、硬さ加減、傾き加減の観点でデザインが決定つけられているところが多いのではないかと感じ、その3点について解説していきたいと思います。
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雨水の導きかた
雨の日、足元が水たまりとならないよう、雨水をすばやく排水する必要があります。舗装の種類によって、雨水の導きかたも異なってきますが、一般的なアスファルトの場合、舗装表面に傾きをつけ側溝等へ雨水を導くよう設計されます。アスファルトで作られている道路が水たまりとならないのは、道路の中央が最も高く、道路両サイドが低く設計されており、道路両サイドには側溝等の排水ルートが確保されているからです。フラットに見える道路でも雨水を排水するため、必ず緩い勾配で傾いています。
歩道部も同様に、水たまりとならないよう、どちらかに傾きをつけて雨水を側溝へ導いています。例えば、4m幅の道路があると、道路中央からそれぞれ両サイドへ2m分傾いています。勾配は1.5%が標準ですので、2m×1.5%=3㎝となります。道路中央と両サイドでは3㎝高低差があることになります。見た目ではほとんどわからない程度ですが、その高低差のおかげで道路に水たまりができず安全に走行することが出来ます。
アスファルト等の雨水を浸透しない素材で舗装を計画する場合、必ずどこかへ導くために1.5%程度の勾配で床面は傾いていますので、導く距離が長ければ長いほど高低差は大きくなるため、広大な敷地の場合、ある一定距離ごとに側溝を設けて、一旦表面の雨水を地下へ導いて地上の傾きを制御します。側溝を設けると、地上部の雨水は地下へ導かれ水たまりは出来ませんが、あまり美しいものではありません。側溝の蓋はコンクリート製や鉄製のグレーチング等が一般的ですが、景観を損なうことになります。
そこで、側溝を設けない方法や、できる限り少なくする方法がいくつか考えられます。ひとつは、表面の舗装材を雨水が浸透する材に変え、表面に雨水が溜まらないようにする方法です。具体的には、浸透性アスファルト舗装や、浸透性インターロッキングブロック、浸透性コンクリート平板舗装等があります。
それらは、水を浸透しますので、表面に雨水が溜まりにくい構造となっております。ただし、全くたまらない訳ではありませんので、同じように勾配を設けて最終的には側溝を設けることが望ましいですが、浸透する分、勾配は緩く設定でき側溝を少なくすることは可能です。ほかには、側溝ではなく植栽帯を適所に設け、雨水はそちらへ導くよう計画すれば、側溝を減らすことが可能です。また、それらを組み合わせて、側溝を減らしながら美しい舗装デザインを実現している事例もあります。
このように、排水側溝を感じさせず美しい床材だけで構成された舗装面は、人の感覚的な所で居心地よく感じられることになります。
硬さ加減
床面はどっしりと安定感があるほうが、人は違和感なく歩行できます。舗装がなく、泥面でぬかるんでいたり、落ち葉の上を歩くようなふわふわした床面では、安定して歩行できません。上記は極端な例ですが、人は床面の硬さに非常に敏感な生き物で、少しの硬さの違いで違和感を感じます。コンクリートとアスファルトも硬さは微妙にことなりますが、この微妙な硬さも人は認識しています。この硬さ加減は、硬ければ硬いほどスポーツをするときの体への負担は重くなりますが、通常の歩行では、硬い方が安定感を得られます。
舗装材は、アスファルトやコンクリート、インターロッキング、タイル、石等様々ありますが、石が最も硬度が高く、人は安定して感じられるようです。これは、硬さだけでなく昔から石畳の舗装で生活してきた文化もあり安心感も合わされた心理的なところもあるようです。石畳は日本だけでなく、ヨーロッパでも昔から使われており、人にとって安定感だけでなく、最も馴染みのある舗装材であると思います。
石畳みも四角いサイコロ状のものを敷きならべる方法や、薄くスライスした石を敷きならべる方法や、丸みを帯びた石を並べる方法等、様々ですが、石畳みはどれも歴史性が感じられ、歩いていると程よい緊張感と風情を感じられることがあります。
傾き加減
雨水排水のための勾配ではなく、敷地内の高低差解消の為や、バリアフリーの為のスロープ等、なんらかの理由で、床面が傾いている場合があります。先ほどの雨水排水での勾配は1.5%(=1.5/100)と解説いたしましたが、バリアフリーでのスロープの勾配は1/12以上(緩く)とされています。バリアフリーの1/12は車いすの方でも走行可能な勾配とされています。ただし、雨水排水勾配1.5/100に比べて、1/12は非常に傾きがきつく、明らかに床が傾いているのが判断できるレベルです。
駐車場や歩道等では、違和感なく駐車や歩行できるよう出来る限りフラットに設計しますが、公園や広場等の公共の憩いの場所ではあえて勾配に起伏をつけデザインする場面もあります。その場合は、床面への舗装材も工夫が必要となってきます。曲面への施工性や、起伏があることでの安全面を考慮すると、石のような硬い材よりは、もう少し柔らかい材の土を固めて作る洗い出し舗装や、芝生張りが合っています。また、舗装材を比較的柔らかいもので起伏があると、石畳みでの歴史性や重厚感とは対照的に、遊び心が生まれ人は開放的になるとされています。
まとめ
今回は、舗装の雨水の導きかた、床材の硬さ加減、傾き加減について解説してきました。これらは人の心理的な感覚に対して操作する内容が多いですが、舗装のデザインについては、ほかにも温度・湿度の操作や、音に対する操作等の触覚、聴覚等に対して操作することも可能なところです。何気なく感じられている舗装材ですが、実は奥が深く人の感覚的なところを操作するもので、建築設計の中でも非常に重要なところでもあります。
建築の外観やインテリアは視覚的にわかりやすいところですが、舗装のデザインはあまり気になって見ていないところです。五感で知らず知らずのうちに感じられて操作されているとこでもあり、建物へのアプローチで建築が美しいと感じているのは、実はそのアプローチの舗装からそれらを感じられるよう操作されているところもあるかもしれません。
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one archi
現在の主な作業
一級建築士試験に一発合格し、組織設計事務所にて主に学校、公民館、道の駅、発電所等の幅広い用途の公共建築物の設計を行なっている。
自己紹介
芸術学部建築学科を卒業後、ハウスメーカーメーカーにて住宅の設計販売に携わる。一級建築士事務所開設を夢に、ハウスメーカーを退職し資格学校へ通うが、そこで現職場の先輩にスカウトされ組織設計事務所に所属する事になる。一級建築士の他に、インテリアプランナー、建築積算士、casbee評価員の有資格者である。2020年、実務経験と建築知識を活かして建築系のWEBライターとして始動。
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