建築デザインにおいて「円」は、古来より完璧、永遠、調和の象徴として愛されてきました。四角い箱型の建物が効率性を象徴する一方で、角(カド)のない円形のデザインは、私たちに心理的な安らぎや、他者とのつながりを感じさせてくれます。今回は、世界的な名作美術館から国立競技場、そして未来の大阪・関西万博といった国家的プロジェクトまで、建築における「円」の魅力とその活用術について深掘りします。
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なぜ私たちは「円」に惹かれるのか?

建築における曲線、特に円形は、直線的な空間にはない特別な力を持っています。
平等と交流の場
円卓会議がそうであるように、円形の空間には上座・下座の概念が生まれにくくなります。人々が中心に向き合い、対等なコミュニケーションを促す「和」の空間となります。
包容力と安心感
母親の腕の中のような、あるいは巣のような、包み込まれる感覚を与えます。角がないことで視覚的なストレスが軽減され、無意識の安心感につながります。
終わりなき連続性
円には始点も終点もありません。この形状は「永遠」や「循環」を連想させ、持続可能性が問われる現代において強いメッセージ性を持ちます。
「円」が象徴する名作・巨大プロジェクト
美術館のような文化施設から、国を代表するプロジェクトまで、「円」は重要なコンセプトとして採用されています。
【文化施設に見る「開かれた円」】
金沢21世紀美術館(日本・石川)
設計:SANAA

建物全体が直径約113mの巨大な円盤形です。正面(ファサード)がなく、街に対して360度どこからでもアクセスできるこの形は、「まちに開かれた公園のような美術館」というコンセプトを完璧に体現しています。
ソロモン・R・グッゲンハイム美術館(アメリカ・NY)
設計:フランク・ロイド・ライト

巨大な螺旋(らせん)状の空間が最大の特徴です。「円を描きながら上り下りする」という、鑑賞者の動きそのものをデザインした建築であり、空間にダイナミックな連続性を生み出しています。
【国家プロジェクトに見る「つながる円」】
近年、日本における大規模なプロジェクトでも「円(環)」が重要な役割を果たしています。これらは単なる造形美を超え、社会的なメッセージを放っています。
国立競技場(東京2020オリンピック・パラリンピック主会場)
設計:大成建設・梓設計・隈研吾建築都市設計事務所JV

正確には楕円形ですが、巨大なスタジアムを包み込む、杉材を使った軒庇(のきびさし)による「環状」のデザインが印象的です。この何層にも重なる木のリングは、日本の伝統的な建築様式を彷彿とさせると同時に、周囲の明治神宮外苑の緑と調和し、「杜(もり)と一体化するスタジアム」を実現しました。世界中の人々を日本の「和の心」で包み込む、巨大な器としての役割を果たしたのです。
2025年大阪・関西万博「大屋根リング」
設計:藤本壮介

完成するまでは様々なネガティブなコメントがあった大屋根リング。結果大成功を納め、万博会場のシンボルとなりました。世界最大級の木造建築物「大屋根リング」です。
一周約2kmにも及ぶ巨大な円環は、多様なパビリオン(個)を一つに束ねる役割を果たしました。テーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」のもと、分断されがちな世界において「多様でありながら、ひとつ(Unity in Diversity)」であることを強力に象徴するデザインです。来場者はこのリングの上を歩き、会場全体を見渡すことで、一体感を体験することができました。
住宅設計に「円」を取り入れるヒント

巨大なプロジェクトだけでなく、私たちの住まいにも「円」を取り入れることで、空間の質は劇的に変わります。
| 手法 | 効果 |
|---|---|
| 円窓(まるまど) | 景色を絵画のように切り取る「借景」効果。和室だけでなくモダンなリビングのアクセントにも最適です。 |
| アール(R)壁 | 玄関ホールや廊下の角を曲線にするだけで、動線がスムーズになり、空間が柔らかく、広く感じられます。 |
| 円形のリビングテーブル | 四角いテーブルよりも動線を確保しやすく、家族の視線が自然と中心に集まり、会話が弾みやすくなります。 |
知っておきたい「円」の難しさ
魅力たっぷりの「円」ですが、設計・施工においてはハードルもあります。
家具配置の難しさ
一般的な家具は四角い部屋に合わせて作られているため、円形の部屋ではデッドスペースが生まれがちです。造作家具で対応するなどの工夫が必要です。
コストと施工技術
曲面の壁やガラスは高度な技術が必要で、特注対応となるためコストが上がる傾向にあります。
まとめ
効率性が優先される社会の中で、私たちは無意識に「つながり」や「安らぎ」を求めています。国立競技場や大阪・関西万博のリングが示すように、「円」は人々を分断するのではなく、包み込み、つなぎ合わせるための形です。社会的な大きな円から、自宅の小さな円窓まで。生活の中に意識的に曲線を取り入れることは、未来に向けた精神的なゆとりをデザインすることにつながるのかもしれません。
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one archi
現在の主な作業
一級建築士試験に一発合格し、組織設計事務所にて主に学校、公民館、道の駅、発電所等の幅広い用途の公共建築物の設計を行なっている。
自己紹介
芸術学部建築学科を卒業後、ハウスメーカーメーカーにて住宅の設計販売に携わる。一級建築士事務所開設を夢に、ハウスメーカーを退職し資格学校へ通うが、そこで現職場の先輩にスカウトされ組織設計事務所に所属する事になる。一級建築士の他に、インテリアプランナー、建築積算士、casbee評価員の有資格者である。2020年、実務経験と建築知識を活かして建築系のWEBライターとして始動。
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