コンクリート打放しの魅力の一つに、「シャープなエッジ」があります。今回はその中でも、最も研ぎ澄まされた「ピン角」に焦点を当て解説していきたいと思います。
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そもそも「ピン角」とは
「ピン角」とは、打放しコンクリートの壁や柱の角が、面取り(角を少し丸める加工)をされずに、角を90度に仕上げている状態のことを指します。この「たった一つの角」に、建築家の様々な想いや、職人さんの高度な技術が凝縮されています。
職人の魂が宿るピン角
ピン角は、施工する上で非常に高い技術が求められます。なぜなら、少しでもズレが生じると、そのシャープさが失われてしまうからです。
型枠の精度が命
コンクリートを流し込む「型枠(かたわく)」は、まさに建物の形を写し取る精密な木型のようなものです。ピン角を実現するためには、この型枠をミリ単位の狂いもなく組み立てる必要があります。わずかな隙間や段差も許されません。
コンクリートの流し込みも繊細に
コンクリートは液体状ですが、均一に型枠に充填するのは至難の業です。空気の巻き込み(ジャンカという、コンクリートがしっかり詰まらずにできる隙間のこと)や、砂利が偏ってしまうと、ピン角が欠けてしまったり、表面が荒れてしまったりします。
脱型時の緊張感
コンクリートが固まって型枠を外す「脱型(だっけい)」の瞬間は、職人さんにとって最も緊張する時です。ピン角は非常にデリケートで、少しの衝撃でも欠けやすい性質があります。無事に型枠が外れ、完璧なピン角が現れた時の感動は、言葉にできないほどです。つまり、ピン角は、熟練の職人さんが持つ「匠の技」の結晶なんです。だからこそ、そのシャープな美しさには、技術的な背景に裏打ちされた説得力があると思います。
デザインが生み出す空間の表情:光と影が織りなすアート
ピン角が持つ、研ぎ澄まされたシャープさは、デザイン上、非常に大きな効果をもたらします。
光と影のコントラスト
ピン角に光が当たると、そのエッジが際立ち、美しい光の線が生まれます。逆に、影の部分はより深く、空間に奥行きや立体感を与えます。時間とともに移り変わる光の変化が、このピン角によってドラマチックに表現されるのです。
ミニマリズムの追求
余計な装飾を排し、素材そのものの美しさを追求する「ミニマリズム」の思想と、ピン角は非常に相性が良いです。空間がすっきりと引き締まり、洗練されたモダンな印象を与えます。
凛とした空間の創造
シャープな角は、空間全体に「凛とした」緊張感と静けさをもたらします。美術館やギャラリー、あるいは落ち着いた雰囲気の住まいなど、集中力を高めたい空間や、アート作品を引き立てたい空間で効果を発揮します。ピン角は単なる角ではなく、空間に個性と表情を与える「デザイン要素」として、非常に重要な役割を担っているのです。
まとめ
普段、何気なく目にしている建物の「角」に、これほどまでの技術、デザインへのこだわりが詰まっています。打放しコンクリートのピン角は、単なる装飾ではなく、
- 職人さんの卓越した技術の証
- 光と影を操り空間を表現するデザインの妙
が、複合的に絡み合った結果として生まれています。
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one archi
現在の主な作業
一級建築士試験に一発合格し、組織設計事務所にて主に学校、公民館、道の駅、発電所等の幅広い用途の公共建築物の設計を行なっている。
自己紹介
芸術学部建築学科を卒業後、ハウスメーカーメーカーにて住宅の設計販売に携わる。一級建築士事務所開設を夢に、ハウスメーカーを退職し資格学校へ通うが、そこで現職場の先輩にスカウトされ組織設計事務所に所属する事になる。一級建築士の他に、インテリアプランナー、建築積算士、casbee評価員の有資格者である。2020年、実務経験と建築知識を活かして建築系のWEBライターとして始動。
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