日本人にとても慣れ親しんだ「畳」ですが、実は様々な種類があることをご存じでしょうか。昨今の住宅では、畳を使用した、いわゆる和室の文化も薄れつつありますが、下足を家の中で履かない日本の文化にとって、肌に触れる床材としての畳は、決して悪いものではありません。今回は、畳の種類や特徴から、選び方のポイント等を紹介します。
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畳のメリット
畳の素材となるイ草(いぐさ)は、天然の抗菌・浄化作用があり、吸湿性がある為、季節によって湿度が大きく変化する日本の気候にとって、非常に重宝される床材でした。現在では、樹脂や和紙を利用した天然イ草と似た繊維で作られる材料のものもあり、水に強い等の特徴があります。また、近年の研究により、畳にはシックハウスの原因となる、ホルムアルデヒドや二酸化窒素を吸着し、空気を浄化する効果があると考えられています。
日本の高温多湿な夏場、低温低湿の冬場の両方にとって、畳は優れた断熱性能を発揮し、夏場は涼しく、冬場はほのかに温かいという環境をつくってくれます。そして、畳の適度の弾力性によって、転んでも怪我をしにくく、硬いフローリングよりも身体への負担も和らげてくれます。そして、畳独自のイ草の香りにアロマセラピー効果も期待でき、集中力の持続という効果も期待できるという実証もあります。
畳のメリットまとめ
- 断熱・湿度調整による室内環境の快適化
- クッション性による身体への負担低減
- 香りによるアロマセラピー効果
畳の構成
畳と言っても、素材だけで様々な種類があります。その紹介の前に、畳の構成から紹介したいと思います。
畳とは、畳の芯材になる「畳床(たたみどこ)」、表面に貼り付けられる「畳表(たたみおもて)」、畳の角の摩耗を保護する「畳縁(たたみべり)」の3つの材料から構成されることが一般的です。
それぞれの種類は後ほど紹介しますが、畳とは、「床となる板部分にイ草を巻き付けてパネル上にしたもの」というイメージが良いと思います。少し思い出してみると、今でこそインテリアの人気アイテムであるラグマットや座布団の類にも、イ草を使用したものがあります。材料として、現在でも魅力あるアイテムであることが伺えます。
それでは、畳の素材の種類や特徴について紹介します。
畳表の種類
畳表(たたみおもて)は、目に見えている畳の表面の部分を指します。イ草(いぐさ)が使用されることが一般的ですが、化学繊維を使用したものもあり、耐水性や摩耗性に優れている点が使い易い畳として近年人気を得ています。使用するイ草が国産か、中国産かという違いがあり、加えて昨今、海外からの輸入畳としても人気な化学繊維畳が存在しています。
国産畳表
非常に高品質なイ草となります。弾力性と耐久性に優れていますが、価格も高価となります。手触り、香りも共に高いイ草です。表替え(畳床は変えずに畳表のみの張替)で8000円~10000円程度となります。
中国畳表
現在一般普及している畳のイ草です。国産畳表より品質は劣りますが、価格が手頃である為、一般的な畳となっています。決して品質が悪いわけではなく、マンション等にも利用されている一般的な畳です。表替え(畳床は変えずに畳表のみの張替)で5000円~7000円程度となります。
違いは「収穫の時期」と「等級分け」です。中国産のイ草の収穫は6月初旬となります。日本では、6月下旬から7月初旬に収穫します。この収穫時期の違いが、イ草そのものの強度の違いを生んでいます。また、国産では、収穫されたイ草の育ち具合に対して等級別に選別しますが、中国産では、その選別に時間をかけていないこともあり、日焼けによる色ムラや耐久性の違いが出てきます。ただ、中国産が悪いわけではなく、例えば賃貸マンションで中国産が使用されるのは、張替時期が速いからです。心地よい住まいには国産畳表をおすすめしますが、用途によって使い分けるということが、現在の主流といえます。
化学畳表
昨今、天然イ草と似た繊維で作られる、化学製品の畳の人気が増加しています。原材料は樹脂や和紙が主流です。
化学畳表の特徴
- 色を付けられる(カラーバリエーションが豊富)
- ダニ・カビの発生原因となる栄養素がない
- 日焼けによる変色がない
- 耐水性に優れており、汚れにくい など
先程の畳のメリットで紹介した「香り」という点では、化学畳表には香りはありません。湿度を調整する効果は、化学畳表にもありますが、自然素材には及びません。どちらかというと、メンテナンス性やインテリア性能重視です。現在の住宅では、断熱性能も向上しているので、畳のクッション性や素材感を重視する場合は、おすすめの畳です。
畳床の種類
様々な畳床の種類について紹介します。それぞれの特徴を見ていきましょう。
藁床(わらどこ)
天然素材でつくられた、湿度の調整効果に非常に優れた材料です。耐久性も高い素材となります。等級が高いものは、50年以上は使用できます。しかし、生産業者の減少や、それに伴うコストの高さもあり、現在の新築物件には、殆ど使用されていません。
ちなみに、かつての住宅では一般的に使用されていた為、全く存在していないわけではありません。ものすごく重い畳床でもあります。
建材床(けんざいどこ)
現在の主流は木質繊維板です。ダニ等の害虫が発生しにくい点メリットであり、断熱効果も優れています。化学繊維で作られているので、化学床(かがくどこ)とも呼ばれます。
種類が幾つかあり、タタミボードと呼ばれたり、タタミボードでポリスチレンフォーム(断熱材)を挟んだものもあります。
藁サンド
藁を使用することで、藁の感触、耐久性や湿度調整等の機能を持たせつつ、藁床よりも軽量化や価格を手頃にしたものです。藁自体の生産量が年々減少しているので、それでもなお藁床にこだわりたい場合にはおすすめです。
イ草や藁(わら)は天然素材ですが、刈り取った後も呼吸をします。この素材の呼吸が、湿度を調整し、快適に過ごすことができる理由です。
藁の断面です。空気層があり、断熱効果が高いのはこの為です。藁を6束から8束分で畳床1枚程度になりますが、重さは25kg~40kg程度の重さになります。湿度の調整効果もあります。
イ草の断面です。スポンジ状となっており、空気の清浄効果があります。藁と同様に、湿度の調整効果もあります。
畳にダニが発生する原因
天然の藁やイ草には、ダニの発生やカビが発生する場合が確かにあります。しかし、発生する状況は限られており、発生させないポイントは、「湿気を保たないこと。通気を良くすること。」です。藁やイ草は、「呼吸」する素材です。そのため、密閉に弱いとも言い換えられます。
ダニやカビの発生原因
- 布団を敷きっぱなしで何日も放置する
- 日当たりが悪く締め切ったままの部屋
布団を敷いている場合は、きちんと畳み、通常のお掃除や換気を行っていれば、ダニやカビの発生はありません。
畳を張り替えるタイミング
畳はメンテナンスが必要なものです。但し、メンテナンス方法にも種類があるので紹介します。
裏返し(うらかえし)
畳を裏返して張り直します。畳は裏も表も使用出来る床材ですので、使用されていない裏面を表にすることです。5年程度で行います。
表替え(おもてかえ)
畳床(たたみどこ)は交換せず、畳表(たたみおもて)のみ交換することです。畳床と畳表の寿命がまったく違いますので、畳の交換というと、表替えを指すことが一般的です。10年程度が交換の目安です。
新床(しんどこ)
使用している材料にもよりますが、20年~30年程度で交換します。畳そのものの新調となります。
最近人気の琉球畳
畳縁(たたみべり)のない、半畳サイズの畳を市松模様に敷いたものを琉球畳と呼びます。元々、沖縄地方で栽培されていた七島イ(しちとうい)というイ草を使用した畳の名称で、イ草自体が太いため強度があり、その為、畳縁を必要としない畳の製作が可能でした。
現在では、畳をインテリアとしてとらえる場合も多く、この琉球畳を使用したデザインの住宅が増えつつあります。また、製織技術の向上が、七島イを使用しなくても、畳縁のいらない畳の製作を可能にしています。ですので、通常のイ草で製作した畳縁のない畳を、元々の七島イ製と区別して、「琉球風畳」と呼ぶこともあります。
最近人気の畳ベッド
日本に馴染み深い「畳」を使用した畳ベットは一般的なマットレスを使用したベットとは違った魅力があります。最近の住宅事情は、洋室がかなりの割合を占め、和室がない家が急増しています。そのなかで、和のテイストがひとつでも入っていると心が落ち着きます。畳ベッドはおしゃれなだけでなくたくさんのメリットがあるのも人気のひとつ。下記の記事では用途ごとにおすすめの畳ベッドを紹介しています。
畳の選び方のポイント
畳という素材は、その肌触りや素材の機能性で、日本人には慣れ親しんだ素材です。一方で、床材でありながら消耗品としても考えられ、特にメンテナンス性や家具の置きにくさ等のデメリットも考えられる為、生産数が減少しています。ですが、やはり畳そのものの人気も根強く残っている為、素材の特徴をよく理解した上で、畳を使うこと自体には良さがあります。
現代の住宅では、断熱性能や高気密性能から、快適に暮らせる住宅が増えています。畳の断熱性能は、こうした住宅では問われなくなりつつありますが、癒し空間としての畳の利用が、進みつつあります。畳のクッション性は、他の床材では再現しにくいですし、さわり心地も良いものだからでしょう。これから新築住宅で畳の利用を考える場合は、畳そのものの機能だけでなく、インテリアとしてとらえた方が、より畳の空間を楽しめると思います。
例えば、2018年から2019年にかけて、テクノロジーと伝統を癒合させた、「変形デザイン畳」が話題となりました。これは、畳そのものの機能性も確保しつつ、畳をデザインとして空間に存在させる例でした。
デジタル技術の発展が、このような畳のデザインの製作を可能としています。また、昨今のオフィスでは、休憩スペースや会議スペースに畳を使用している例があります。
イ草や藁という自然素材の良さと、現代のデザインに合わせた使い易さ、メンテナンス性の良さが、技術の発展とともに、新たなバランスの時代になりつつあります。畳が、リラクゼーションとしての機能を持ち合わせる床材であることが、再度認識されているのかもしれません。心地よい住宅環境をつくる為にも、和室というイメージを超えた畳の使い方を考えてみることで、畳という素材を、今の住み方と合わせて検討することが出来ます。
畳ベッドの種類一覧
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